[2019_11_15_01]カリフォルニア 動き出した断層は大地震の序章か(島村英紀2019年11月15日)
 
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カリフォルニア 動き出した断層は大地震の序章か

 米国カリフォルニア州を南北に縦断してサンアンドレアス断層という活断層が走っている。長さが1300キロもある。同州で起きた地震はすべて、この大断層絡みなのである。
 このサンアンドレアス断層は不思議なことに、いつも動いている「クリープ断層」と、ふだんは動かなくて固着している断層とがあることが分かっている。このうち、ふだんは動かない断層だけが地震を起こすと考えられてきた。
 同州北部にあるホリスターは人口3万あまりの小さな市だ。ここにはクリープ断層が走っていて、家も道も塀も次第にゆがんできている。その断層の動きは年に1センチほどだ。
 このクリープ断層には地震は起きない。ちなみに、ここは足の数が世界で最も多いヤスデの生息地でもある。
 一方、1906年に起きたサンフランシスコ大地震は、同じサンアンドレアス断層の北部の固着断層が起こした地震で、米国の大都市を襲った地震として最大の被害を生んだ。マグニチュード(M)は7.8だった。当時のサンフランシスコの人口40万人のうち、死者は約3千人以上、22万5千人が家を失った。この地震以後、米国でも耐震建築が広く作られるきっかけになった。
 なぜ、同じサンアンドレアス断層に、クリープ断層の部分と、ふだんは固着していてたまに地震を起こす断層があるのかは、いまだに分かっていないナゾである。
 だが、ことし7月に発生したリッジクレスト地震で情勢が変わった。
 この地震は同州南部、ロサンゼルスから北北東へ約200キロのリッジクレストで起きた。M7.1だったが、M6.4とM5.4の前震が前日からあった。M7.1 は過去20年間で現地では最大規模の地震だった。
 地震で、道路や建物などに被害が出うえ何件もの火災が発生した。前震でも被害が出ていた。
 じつは、このリッジクレスト地震が起きて以来、いままでは固着していた近くの断層が観測史上初めて動きだしたのだ。じつはここでは1995年にもM5.4の地震があったが、そのときはなにも変わらなかった。
 いままでは固着域は固着、クリープ域は地震を起こさないクリープという別々の2種類が分かれていたのだが、史上初めて、片方からもう一方に変わったのである。
 これには多くの地震学者が首をひねっている。この動き出した断層が、素直にクリープをしてくれるのか、分からないからである。
 このままクリープだけを続けるという説がある。いや、クリープではすまなくて、同州では最大のM8クラスの大地震がいずれ起きるに違いないという学者もいる。いままで固着していた地震のエネルギーが溜まっているはずだというのである。始まったばかりの断層の動きは大地震の序章だというのだ。
 どちらの説ももっともらしい。地元はもちろん、多くの地震学者は固唾をのんで見守っているのである。

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