[2019_10_26_02]「エコカー」の裏に原発あり 電気自動車(EV)も燃料電池車(FCV)も新手の原発推進策 高温ガス炉の重大な問題点は製造される水素にトリチウムが混入すること 上岡直見〔環境経済研究所(技術士事務所)〕(たんぽぽ舎2019年10月26日)
 
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「エコカー」の裏に原発あり 電気自動車(EV)も燃料電池車(FCV)も新手の原発推進策 高温ガス炉の重大な問題点は製造される水素にトリチウムが混入すること 上岡直見〔環境経済研究所(技術士事務所)〕

 10月24日から開催される「東京モーターショー」では各メーカーは電気自動車(以下EV)を主役に打ち出している。
 しかしEVが大量に普及すると、その電力需要を何で賄うのだろうか。
 2017年6月の「クリーンエネルギー大臣会合」では「EV30@30」というキャンペーンが提唱された。そもそも「クリーンエネルギー大臣会合」などという名称自体が怪しい。
 そこでは2030年までに全ての自動車を対象として、新車販売シェアに占めるEVの割合を参加国全体で30%以上を目指すとしている。
 しかしこれが達成された場合、世界で年間9240億kWhの電力需要が発生し標準的な原発150基分に相当する。大部分の車は昼間に稼働して夜間に充電する面からも原発との関連性が強い。化石燃料で発電することも可能だがそれでは「クリーンエネルギー」の名目が立たないだろう。
 燃料電池車(FCV)も怪しい。2019年9月に「水素閣僚会議」が開かれ参加国は水素を燃料とするFCVや水素飛行機を今後10年間で計1000万台に増やす行動指針を発表した。
 もともと原子力関係者は、福島第一原発事故前から先進国の電力需要は頭打ちにあることを前提として、原子力の用途として水素製造を提唱してきた経緯がある。
 具体的には高温ガス炉である。開発は福島第一原発事故以前から行われていたが、民主党政権での第三次エネルギー基本計画で削除されたのに対して、自民党政権での第四次エネルギー基本計画で復活した。
 現段階で存在する日本の高温ガス炉は日本原子力研究開発機構のHTTRであり、2014年に外部有識者の答申を受け開発を進展させることが決定された。
 高温ガス炉は現在の軽水炉より安全と宣伝されているが、福島第一原発事故や高速炉の頓挫の実態をみれば、もはや信用する人はいるまい。
 しかも高温ガス炉の重大な問題点は、製造される水素にトリチウムが混入することである。福島第一原発の汚染水のトリチウムならタンクに溜めて減衰を待つ選択肢もあるが、車や航空機から大気中にトリチウムが排出されたら対策は不可能である。
 いずれにしても、「エコカーの裏に原発あり」を警戒する必要がある。
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