[2019_10_09_06]原発事故の理不尽、悲惨を物語る3・11の犠牲者 孤児になった子どもたちに公共の援助、東電の賠償を! フィールドワークで見た復興に程遠い被災現地の現実 (中)(3回の連載) 渡辺寿子 (原発いらない!ちば)(たんぽぽ舎2019年10月9日)
 
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原発事故の理不尽、悲惨を物語る3・11の犠牲者 孤児になった子どもたちに公共の援助、東電の賠償を! フィールドワークで見た復興に程遠い被災現地の現実 (中)(3回の連載) 渡辺寿子 (原発いらない!ちば)


6.原発に反対した人たちの無念の死 放射能事故の理不尽、悲惨

 木幡ますみさんは3・11の地震が起きた時、国道6号線を軽トラックで走っていました。
 津波で流された人が水に浮かんで助けを求めているのが見えましたが、どうすることもできませんでした。
 心の中で「ごめんね。ごめんね」と叫んで車を走らせました。今でもその時の夢を見てうなされるそうです。
 2011年3月14日頃、請戸地区に避難命令が出され、高い放射能のため立ち入り禁止になってしまい、誰も津波の被災者の救助に向かえなくなってしまいました。
 立ち入り禁止解除後に、死んでいた人たちの遺体を調べたところ、殆どの人の死因は餓死だったということです。
 津波では助かったのに、その後の数日間救助が来なくて、何も飲み食いできなかったための餓死でした。
 請戸地区の人たちは原発建設に反対していたそうです。それなのに原発事故によって殺されてしまったとはどんなに無念だったことでしょう。
 原発事故という核事故、放射能事故の理不尽、悲惨をこれ以上ない位表しているこの事実に衝撃を受けました。

7.ヨウ素剤や放射能を知らない町職員

 木幡さんが3・11後、避難所に行き、大熊町の職員にヨウ素剤のことを聞きました。
 しかし誰もヨウ素剤のこと、放射能のことなど殆ど知らないことがわかりました。木幡さんは仕方がないので昆布を沢山買ってきて、皆に配って回ったそうです。

8.大平山コミュニティー広場

 請戸小学校跡を後にして大平山コミュニティー広場という所に行きました。ここは小高い丘で、3・11後公園広場として整備されました。一角に3・11の犠牲者を追悼する石碑が建てられています。葛尾村職員だった松本さんが案内してくれました。

 以下「」内は松本さんの話。
 「請戸地区は3・11当日まともに津波の被害を受けた。この地域は昔海水浴などによく来ていた。
 第一原発の1号機はわざわざ地盤を下げて作っている。福島第一原発の事故は人災ではなかったかと思う。この地域の被害は津波の被害ということで、東電の賠償対象地域になっていない。
 それ故賠償額が少ない。この辺に住んでいた人たちはここの土地を手放して災害公営住宅か借り上げの住宅に入っている。そういうことで請戸の人たちは津波被害と原発被害のはざまで複雑な立場に置かれ、非常に苦労している」。

9.3・11で孤児になった子どもたちに公共の援助、東電の賠償を!

 土地の事情に精通した人でなければ分からない松本さんの話を聞き、津波を逃げおおせ無事助かった請戸小学校の生徒たちのことが思い浮かびました。
 3・11で小学生だった子どもたちは命拾いしましたが、その子の親たちの多くは第一原発事故のせいで悲惨で無念な死を迎えてしまったわけです。
 3・11の大地震と大津波、福島第一原発事故で両親を失い、孤児となった子どもたちは請戸地区の例を含め膨大な数に上ることでしょう。
 小学生だった子どもたちがどうやって暮らしてきたか、両親を失った子どもの多くは、親類などに引き取られたり、施設に入ったと思われますが、これからどうやって暮らし、自立していくのか気にかかります。

 戦後すぐ上野の地下道などで暮らし、食べ物を盗まなければ餓死してしまう過酷な状況を必死で生き抜いた戦災孤児、いわゆる「浮浪児」に対し、国は劣悪な施設に閉じ込めることしかしなかったので、「浮浪児狩り」で捕まった子どもたちの多くは施設を逃げ出したといいます。
 それ以外の援助、保護はなく、地下道で餓死していくような「浮浪児」に対し、世間の目も冷たかったそうです。

 それに比べれば現在の孤児の状況はよいのでしょうが、アメリカから役に立ちそうもない高額兵器を購入するのに多額の税金を気前よく支払うのに、3・11の被害者に対して命綱の住宅を取り上げるなど血も涙もない扱いを国はしています。
 3・11の被害者に対し、特に保護者を失った子どもたちに対しもっと税金を使って援助すべきです。

 放射能で親たちを殺し、子どもたちを甲状腺がんなどにした東電も日本原電への資金援助、柏崎刈羽再稼働のために膨大な資金投入などせずに、その余裕があるなら被害者、被災者援助にまわすべきです。
                      (「下」に続く)
 (「原発いらない!ちば」9月号ニュースより了承を得て転載)
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