[2019_10_03_04]社説:関電の再会見 不信感が募るばかりだ(京都新聞2019年10月3日)
 
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社説:関電の再会見 不信感が募るばかりだ

 十分な説明にはほど遠く、疑惑が晴れたとはとてもいえない。
 関西電力の役員らが福井県高浜町の元助役から多額の金品を受領していた問題で、岩根茂樹社長らが改めて記者会見した。
 9月27日の会見で岩根氏は個人情報保護などを理由に情報を出し渋り、世論の批判を受けた。
 非公表としていた20人の氏名や金額、受け取った時期などを原則として公表する方向だったが、氏名公表は12人にとどまった。
 関電は調査報告書を公表し、元助役への工事情報の提供と建設会社への工事発注を認定する一方で、これらは金品受領の対価とは言えないと違法性を否定した。
 元助役に約3億円を提供した建設会社は原発関連工事の受注で売上高を急増させ、5年間で少なくとも約6倍に伸ばしている。元助役は発注側の関電子会社と、受注側の建設会社の、双方の役職に就いていた。
 誰が見ても健全な取引とはいえない。「原発マネー」が還流し、便宜供与があったとの疑いが浮上するのは当然だ。
 それなのに会見では金品受領の違法性を否定する根拠が示されないため、まったく説得力を欠く。
 関電は第三者委員会を設置し、年内に報告書を取りまとめるとするが、どこまで実態解明ができるのか、不信感は募るばかりだ。
 なぜ関電ほどの会社が元助役との関係を断ち切れなかったのか。会見に同席した八木誠会長は、金品の提供は東日本大震災後にエスカレートしたと説明した。
 報告書は元助役について国会議員に広い人脈を有し、意に沿わないことがあると「発電所を運営できなくしてやる」とどう喝したと指摘した。
 関電は原発への依存度が特に高い。再稼働への逆風が強まる中、原発の安全性確保よりも地元対策が優先され、癒着の構図がより抜き差しならないものになったのではないか。
 とはいえ「どう喝されて返せなかった」と元助役の人間性に問題を矮小(わいしょう)化するかのような関電の姿勢には、強い違和感を覚える。
 なぜ元助役のような存在が生み出され、長年力をふるうことになったのか―。原発立地を巡る構造的な問題を明らかにしなければ、信頼回復はないだろう。
 安倍晋三政権は原発再稼働を進めているが、不信の拡大が再稼働議論に影響を与えるのは確実だ。まずは徹底した問題の真相究明が求められる。
(京都新聞 2019年10月03日掲載)
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