[2019_07_07_01]3.11被災 固定資産税の減額終了へ 原発避難者、税6倍にも(東京新聞2019年7月7日)
 
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3.11被災 固定資産税の減額終了へ 原発避難者、税6倍にも

 東日本大震災や東京電力福島第一原発事故で住宅を解体した後の更地について、二〇二二年度から固定資産税が大幅に増額される。住宅の立つ土地並みに減額する特例が二一年度末で終わるためで、額は六倍程度まで上がる恐れがある。とりわけ原発事故で避難し、帰還できないでいる福島県の被災者は、避難生活での収入減に税の増額が重なり、影響は大きい。しかし、国はどの程度の人が減額を受けているか把握しておらず、特例の延長も議論していない。 (榊原崇仁、写真も)
 固定資産税は地方税で、地価公示価格などを踏まえた「評価額」に税率を掛けて算出する。その土地に住宅が立っていれば税を減額する特例があり、最も優遇された場合、額は六分の一になる。
 震災後、被災者の負担を軽くするため、傷んだ住宅を解体した更地は「住宅あり」と見なす規定ができた。原発事故で人が住まなくなった住宅を解体した場合にも適用される。この規定は「一二年度から二一年度まで」と地方税法の付則にあり、延長がなければ二二年度から税額が変わる。
 影響は、住民の帰還が進まない原発事故の被災地で深刻になる。
 福島県浪江町では、全町民二万一千人に避難指示が出て、その後約一万五千人が住んでいた地域では解除された。避難指示が出ている間は全額、解除から三年間は半額という別の減免制度もあるが、それが終わると跳ね上がった税がそのまま負担になる。
 町などによると、住宅などの解体に約四千件の申請があり、うち約三千件は解体を終えた。帰還した町民は6%にとどまる。避難先で生活が苦しいところに、税の増額が重なる住民は多いとみられる。
 町民からは不満の声が上がる。塾経営、堀川文夫さん(65)は当面、避難先の静岡県富士市で買った家で暮らす。浪江町の自宅は動物に荒らされたため、解体して更地のままにする。「故郷の自宅が傷んだのは避難のせい、東電のせいなのに納得がいかない」と語る。
 しかし、地方税法を所管する総務省は「現状で規定を延長する議論はない」と説明。固定資産税は各自治体で税額を決め、徴収しているため、どの自治体が特例で減額しているか把握していないという。

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