[2012_09_08_01]返還廃棄物拒否、使用済み燃料の村外搬出 再処理撤退なら対抗策 六ヶ所村議会が意見書可決 国への損賠請求も 使用済み核燃料 中間貯蔵 むつ市長、搬入拒否も 再処理の前提崩れれば(東奥日報2012年9月8日)
 
 六ヶ所村議会は7日、政府が週明けにも決定するエネルギー・環境戦略で核燃料再処理事業からの撤退につながる結論が出た場合、政府や県、村に対して、英仏から返還される放射性廃棄物の受け入れ拒否や、村内に一時貯蔵されている使用済み核燃料の村外搬出などを求める意見書を可決した。同村議会が意見書で国の再処理撤退を視野に入れた対抗措置を具体的に明示したのは初めて。(本紙取材班)

 六ヶ所村議会が意見書を可決した背景には、民主党のエネルギー環境調査会が6日に原発ゼロを目指す政府への提言案をまとめ、全量再処理の現行路線の見直しが濃厚となったことへの警戒感がある。
 村議会むつ小川原エネルギー対策特別委員会委員長の三角武男議員(六新会)と全会派代表3人が連名で意見書を提出。橋本猛一議長と欠席した岡山勝廣議員を除く16人全員の賛成で可決した。
 意見書は、同村が国の核燃料サイクル政策に協力してきた経緯などに触れ「村の事情を無視して議論が進められていることに不信が募る」と主張二昂レベル放射性廃棄物の受け入れ拒否や使用済み核燃料の村外続出のほか、新たな使用済み核燃料や廃棄物の受け入れ拒否、再処理撤退に伴う国への損害賠償なども求めている。
 三角議員は意見書可決後の取材に「総選挙のためだけに『原発ゼロ』を掲げるのはおかしい。サイクル施設立地自治体の意見をもっと聞いてほしい』と語気を強めた。
 一方、古川健治村長は「困難な状況にならないようにするのが自分の仕事。国のエネルギー政策が決まった時点で、対応を考えたい」と淡々と語った。
 六ヶ所村議会の意見書可決について、県幹部は「これが地元の声、意向だということ。国はしっかりと受け止めるべきだ」と述べた。

 海外からの返還廃棄物

 国内の電力会社は、原発から出た使用済み核燃料の再処理を英仏両国に委託した際、発生した放射性廃棄物を日本に返還することで合意。1995〜2007年には仏国から高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)1310本が返還された。六ヶ所村の日本原燃・高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターで、最終処分場(場所は未定)に埋め立て処分するまでの間、一時保管している。
 英国からの返還は10年に開始、今後約900本の返還を想定している。原燃の本年度輸送計画によると、10月以降に28本のガラス固化体を搬入する。海外からの返還廃棄物を運ぶ輸送船の接岸は、港湾管理者である県の許可が必要となる。95年4月と98年3月の2回、木村守男知事(当時)が、「本県が最終処分場になる」との不安が高まっている−などの理由から、輸送船接岸を拒否したことがある。

 使用済み核燃料 中間貯蔵
 むつ市長、搬入拒否も
 再処理の前提崩れれば

 むつ市の宮下順一郎市長は本紙取材に、政府が週明けにも決定するエネルギー・環境戦略で核燃料サイクル政策を断念した場合、同市で2013年秋に事業開始予定の使用済み核燃料中間貯蔵施設への対応について、「(使用済み核燃料の再処理を前提とした)事前の約束が守られなければ、使用済み核燃料の受け入れを断ることも検討しなければならない」と述べた。
 宮下市長が、自ら中間貯蔵施設への搬入拒否に踏み込んだ発言をするのは初めて。
 戦略決定に向けた政府のこれまでの対応について、宮下市長は「政府が核燃料サイクル政策に協力してきた本県への配慮が必要と言うならば、立地地域の声に真撃(しんし)に耳を傾け、その窮状をよくよく理解した上でなければならない」と指摘。「なぜじっくりと私たちの声を聴こうとしないのか。政府の対応は拙速と言わざるを得ない」と厳しく批判した。
 中間貯蔵施設は、東京電力と日本原子力発電が出資する「リサイクル燃料貯蔵(RFS)」が、津軽海峡側に面したむつ市関根地区に2棟建設する計画。1棟目は来年9月にも使用済み核燃料を密閉した金属容器(キャスク)を海路で搬入。国の検査などに合格すれば翌10月に事業開始を見込んでいる。
 政府が「原発ゼロ」を打ち出し、核燃料サイクル政策が後退した場合、中間貯蔵施設を使用済み核燃料の一時保管庫に利用しようとしても、むつ市が事前に安全協定の締結を拒めばキャスクの搬入はできないことになる。
 中間貯蔵施設は東電と日本原電の原発で生じた使用済み核燃料のうち、日本原燃六ヶ所再処理工場の処理能力を超える分を、再処理するまでの問の最長50年間保管する。貯蔵後の使用済み核燃料の搬出先は、六ヶ所に続く第2再処理工場とされるが、建設地などは決まっていない。
   (本紙取材班)
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