[2012_07_15_01]ドイツ倫理委員会が示す未来への責任_代表取締役専務_岡山信夫(農林中金総合研究所_金融市場2012年7月15日)
 
参照元
ドイツ倫理委員会が示す未来への責任_代表取締役専務_岡山信夫

 ドイツでは、メルケル首相による委託により2011年4月4日から5月28日まで設置された「安全なエネルギー供給に関する倫理委員会」(以下倫理委員会)による答申に基づき、脱原発の方針が決定され、2011年7月8日に成立した脱原発法により、2022年までにすべての原発(17基)が停止される。
 倫理委員会による答申には、福島原発事故の惨状に直面しているわが国こそが国民レベルで議論を尽くすべき課題とその解決の方向性が示されている。
 答申は、リスクの問題を単に技術的な側面へと狭めてしまうことは、全体的な考察や包括的な考量という要求からすれば正しくない、と指摘したうえで、「原発のリスクは、実際に起こった事故の経験から導き出すことはできない。なぜなら、原子力事故は、それが最悪のケース(worstcase)の場合にどんな結果になるかは未知であり、また、評価がもはやできないからである。その結果は、空間的にも時間的にも社会的にも限界づけることができない。ここから当然の帰結として、被害事例を除去するために、原子力技術をもはや使用すべきではない、ということになろう」と結論付けている。
 一方でわが国の対応はどうか。6月8日、野田総理は、「国政を預かるものとして、人々の日常の暮らしを守るという責務を放棄することはできない」とし、「国民の生活を守るために、大飯発電所3、4号機を再起動すべきだというのが私の判断だ」と述べた。あわせて、「夏場限定の再稼働では、国民の生活は守れない」との見解を示し、期間を限定した再稼働ではないことを、明確に表明された。また、「国民の生活を守る」という言葉には、二つの意味があるとし、第一は「福島のような事故は決して起こさないということ」、第二は「計画停電や電力料金の大幅な高騰といった日常生活への悪影響をできるだけ避けるということ」だという。そのために、大飯原発を期間限定としないで再稼働させる、というのである。
(後略)

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