[2012_06_28_01]国会事故調_調査報告書[本編](東京電力福島原子力発電所事故調査委員会2012年6月28日)
 
参照元
国会事故調_調査報告書[本編]

(前略)
(P.29〜)
1.2 認識していながら対策を怠った津波リスク
 福島第一原発は 40 年以上前の地震学の知識に基づいて建設された。その後の研究の進歩によって、建設時の想定を超える津波が起きる可能性が高いことや、その場合すぐに炉心損傷に至る脆弱性を持つことが、繰り返し指摘されていた。しかし、東電はこの危険性を軽視し、安全裕度のない不十分な対策にとどめていた。
 平成 18(2006)年の段階で福島第一原発の敷地高さを超える津波が到来した場合に全交流電源喪失に至ること、土木学会手法による予測を上回る津波が到来した場合に海水ポンプが機能喪失し炉心損傷に至る危険があるという認識は、保安院と東電との間で共有されていた。
 改善が進まなかった背景には少なくとも 3 つの問題がある。第一は、保安院が津波想定の見直し指示や審査を非公開で進めており、記録も残しておらず、外部には実態が分からなかったこと。第二は、津波の高さを評価する土木学会の手法の問題である。この手法は電力業界が深く関与した不透明な手続きで策定されたにもかかわらず、保安院はその内容を精査せず、津波対策の標準手法として用いてきた。第三としては、恣意的な確率論の解釈・使用の問題がある。東電は不公正な手続きで算出された低い津波発生頻度を根拠として、対策を施さないことを正当化しようとしていた。一方で津波の確率論的安全評価が技術的に不確実であるという理由で実施せず、対策の検討を先延ばしにしていた。
 東電の対応の遅れは保安院も認識していたが、保安院は具体的な指示をせず、バックチェックの進捗状況も適切に管理監督していなかった。
 今回重大な津波のリスクが看過された直接的な原因は、東電のリスクマネジメントの考え方にある。科学的に詳細な予測はできなくても、可能性が否定できない危険な自然現象は、リスクマネジメントの対象として経営で扱われなければならない。新知見で従来の想定を超える津波の可能性が示された時点で、原子炉の安全に対して第一義的な責任を負う事業者に求められるのは、堆積物調査等で科学的根拠をより明確にするために時間をかけたり、厳しい基準が採用されないように働きかけたりすることではなく、早急に対策を進めることであった。
(後略)

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