[2012_04_29_01]M8超 迅速・正確に解析へ 気象庁 波形や強震域を監視(東奥日報2012年4月29日)
 マグニチュード(M)8超の巨大地震が起きた際、規模を過小評価せず迅速に解析しようと気象庁が取り組んでいる。M9・0の東日本大震災では従来の計算手法の限界から当初、エネルギーを約45分の1のM7・9と算定、津波予想が過小になった苦い教訓からだ。
 津波警報を出す関係から、解析に使える時間は地震発生から3分以内。強い揺れの広がりを監視し断層規模を推定したり、大規模地震特有の長周期の地震波を捉えたりする手法を検討中で、巨大地震でも振り切れない特殊な地震計80基の配備も計画している。
 巨大地震は断層の破壊規模が大きく、東日本大震災は断層の長さが約450キロに達した。気象庁気象研究所は、それに伴い震度5弱以上の揺れとなる「強震域」も広がる点に注目、地震規模を推定する手法を研究中だ。
 東日本大震災のデータを用いた試算では、地震発生1分後は長さ180キロ程度の強震域の広がりから「M8以下」と推定されたが、3分後には680キロに広がって「M8・6〜8・8」に修正。強震域が710キロに及び「M9クラス」と判定できたのは4分後という。
 地震は規模が大きいほど断層破壊にかかる時間が長いため、長周期の地震波が発生する。東日本大震災と2003年の北海道十勝沖地震(M8・0)の地震波を分析すると、短周期の波形は似ていたが、周期が長い約200秒の成分は東日本大震災の方が大きかった。
 気象庁は、こうした地震波を監視し巨大地震の規模を迅速に推定する手法を検討。強震域監視と合わせ地震の過小評価がないか判定するため、試験運用を始めた。
 東日本大震災では長周期の地震波に対応する地震計のほとんどが振り切れ、海外の観測データを使う事態に。M9・0に修正したのは2日後だった。同庁は巨大地震でも振り切れない「広帯域強震計」を秋をめどに全国80カ所に設置する計画。
 一方、世界的にみてもM9クラスの巨大地震はデー夕の蓄積が乏しく、検証の機会も少ない。同庁地震津波監視課の永井章課長は「原理的に難しいところを追求しているが、ツールとして使えるものはどんどん投入する」と話している。
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