[2012_03_23_01]防災30キロに拡大 原発ごと「基準津波」 安全委 指針改定案を了承(東奥日報2012年3月23日)
 原子力安全委員会(班目春樹委員長)は22日、原発事故に備えた防災対策重点地域を原発の30キロ圏に拡大し、原発に大津波が襲来した場合を想定した対策を明文化するなどした原発関連指針の改定案を了承した。

 改定案は規制組織を再編、新設する原子力規制庁に引き継ぐ予定だが、規制庁設置関連法案の国会審議が進まず、当初予定の4月1日発足は困難な情勢。指針改定がいつになるかは不透明だ。
 昨年3月に発生した東京電力福島第1原発事故で、現在の指針の不備が露呈し、安全委は6月から見直し作業を進めてきた。
 対象は耐震性や防災などに関する3指針。
 改定案では、防災重点地域は現在の8〜10キロ圏から拡大し、5キロ圏は事故後直ちに避難する「予防防護措置区域(PAZ)」、30キロ圏は事故の進展に応じ避難する「緊急防護措置区域(UPZ)」に区分。さらに50キロ圏は自宅避難が中心となる「放射性ヨウ素防護地域(PPA)」とした。
 放出された放射性物質による甲状腺がんを避ける安定ヨウ素剤はPAZとUPZでは各家庭への事前配布が有効とし、PPAについても検討の必要があるとした。
 現在の指針で「地震の随伴事象」とされ、ほとんど触れていない津波対策は、想定される最大の津波「基準津波」を原発ごとに設定し、敷地が浸水しないよう防潮堤の設置などを要求した。
 福島第1原発事故では外部電源が途絶え、非常用発電機も水に漬かり使えなかった。改定案では長時間の電源喪失を想定し、代替電源を高台に設置することを盛り込んだ。
 班目委員長は記者会見で「安全委の議論が(規制庁の指針改定に)反映されると期待している」と述べた。

---------------------------------------------------------------------
             指針見直しの主な内容
---------------------------------------------------------------------
安全設計審査指針
  電源
    現在
      短時間で復旧。長時間の電源喪失は考慮は不要
    見直し
      長時間の喪失を想定し、ガスタービンなど代替電源を高台に設置
---------------------------------------------------------------------
耐震設計審査指針
  津波の扱い
    現在
      地震の随伴事象
    見直し
      想定される最大の「基準津波」を設定
---------------------------------------------------------------------
原子力防災指針
  オフサイト・センター
    現在
      関係者が集まりやすい場所
    見直し
     「対策実行拠点」を複数、司令塔の「緊急時対応拠点」を県庁などに設置
  防災対策重点地域
    現在
      原発の8〜10キロ圏
    見直し
      5キロ圏=予防防護措置区域(PAZ)、
      30キロ圏=緊急防護措置区域(UPZ)。
      他に50キロ圏=放射性ヨウ素防護地域(PPA)
  原子力緊急事態
    現在
      周辺の放射線量や原子炉の状態で判断
    見直し
      原子炉の状態により「警戒事態」、「施設緊急事態」、
      「全面緊急事態」に3区分。PAZは全面緊急事態で直ちに避難
  住民避難の判断
    現在
     「SPEEDI」で放射性物質の拡散を予測
    見直し
      原子炉の状態や実測線量を重視
  ヨウ素剤
    現在
      生涯の予測被ばく線量100ミリシーベルトで服用。
      40歳以上は不要。
    見直し
      30キロ圏は家庭配備。予測線量50ミリシーベルトで服用。
      40歳以上も服用を考慮
---------------------------------------------------------------------
KEY_WORD:FUKU1_:TSUNAMI_: