[2012_03_20_01]松田時彦による活断層の長さと起こる地震のマグニチュードの図(直下型地震ーどう備えるか2012年3月20日)
 
第7章 活断層はどのくらい警戒すべきだろうか 5 活断層の長さから地震のマグニチュードを見積もる「まやかし」 図32:松田時彦による活断層の長さと起こる地震のマグニチュードの図
参照元
松田時彦による活断層の長さと起こる地震のマグニチュードの図

※引用者注:p194〜195の関連部分の抜粋


(前略)
 しかし、この活断層の長さから地震のマグニチュードを求める式には大きな疑問がある。あまりにも曖昧さが大きくて、実際に起きうる地震のマグニチュードよりも、ずっと小さなマグニチュードが計算されてしまっているのだ。
 図のように、過去に活断層が起こした地震のマグニチュードと、それぞれの活断層の長さについて研究がある。横軸にマグニチュード、縦軸に活断層の長さをとって図に書くと、雲のようにぼんやりとした形ながら、右上がりの傾向が読みとれる。最小二乗法のようなデータ処理の手法でこの雲全体に一番あてはまる右上がりの直線を描いて、それが「マグニチュードと活断層の長さの関係」の式とされているのだ。
 しかし問題はその先にある。いったんこの式が出来てしまえば、活断層の長さが分かれば、その長さからマグニチュードが計算できてしまうことになる。
 その計算されたマグニチュードは、図でいえば雲の中をたまたま計算上通した一本の線の上の値にしかすぎない。つまり、それから左にも右にも異なったマグニチュードの地震が、過去に「実際に」起きていたのだ。
 だから、この式で計算したマグニチュードよりも小さな地震も起きることがあり、ずっと大きな地震が起きる可能性も十分にあり得る。長さ何キロの活断層があるからマグニチュードがどのくらいの地震しか起きないとは、地震学からは言えないのが真実なのだ。
 じつはもうひとつの問題がある。一般的には、活断層が長いほど大きな地震を起こす。ところが実際の活断層は途切れたり、曖昧になったり、枝分かれしたりしながら延々と続いていることが多い。いや、こういった複雑な活断層のほうが普通なのだ。
 問題はその活断層のうち、どれだけの長さの部分が関与して地震を起こすかという判断が、学者によって大幅に違うことだ。
 それぞれの原子力発電所が建設時に想定していた活断層の長さというのは、どの学者も異論がない定説ではない。だから活断層がらみの地震が起きたとしても、原子力発電所の設計時に想定していた地震よりもずっと大きな地震が起きる可能性が十分に残っている。
(後略)

KEY_WORD:基準地震動: