[2012_02_28_03]たんぽぽ舎 今月の原発 みんな気づいているだろうか 地震防災が原発の妨害を受けていることを 下北半島では 岩手・宮城・福島では 浜岡・三重では 柏崎刈羽では(よせあつめ新聞2012年2月28日)
 日本各地で「大きな地震に見舞われるかもしれない可能性が明らかになった・‥」そんなニユ−スが次から次にと報道されているけれど、東北地方太平洋沖地震が起きたから分かったことなのだろうか。いいや、そんなことはない。地震学者や地球物理学者や地質学者達も遊んでいたわけは無い。
 たくさんの論文がこれまでも出ていたし、多くの知見も発表されていたのに、それをクロ−ズアップさせない勢力がいたのだ。
 どんな?もちろん原子力マフィアだ。
 報道されるかどうかが、この種の問題では−番影響が大きい。貞観地震の影響がどこまであったかとか、東北地方沖で大規模な地震が起こりえるとか、福島県沖にも巨大津波の波源域がありえるなど、阪神淡路大震災以後にたくさんの研究成果が発表され続けてきたのに、報道されなかったか、ほとんど注目されなかった。理由は、たとえば福島県沖で巨大津波などということが「分かった」ら、直ちに原発の安全性問題に直結する。
 疑惑が高まる中、とうとう証拠が上がった。以下の記事を読んでみて欲しい。
 『東日本大震災の8日前、宮城−福島沖での巨大津波の危険を指摘する報告書を作成中だった政府の地震調査委員会事務局(文部科学省)が、東京電力など原発を持つ3社と非公式会合を開催、電力会社が巨大津波や地震への警戒を促す表現を変えるよう求め、事務局が「工夫する」と修正を受け入れていたことが、25日までの情報公開請求などで分かった。』(中国新聞2月26日)
 三社とは、東電、東北電、日本原電である。
 貞観地震を「繰り返していると誤解されないようにしてほしい」と注文を付けていたと言うが、これが仙台平野に襲いかかった貞観津波について、再来の可能性があるとして対策する可能性を奪ってきた証拠だ。
 こんなことは今に始まった話では無い。東電など電力のお抱えご用学者達はよってたかって原発周辺に地震や津波が襲う可能性を否定し続けたため、原子力防災が必要ないとされるのと同時に、行政の地震防災にも大きな悪影響を与えただろう事は想像に難くない。自治体には東電など電力出進議員も多く居るので、大きな地震、津波想定を防災計画において行えば、横やりが入るのは間違いないだろう。何しろ来もしない津波に備えて何百億もの防潮堤を作るなど「常軌を逸している」と普通ならば考える。

 下北半島では

 下北半島の沖、太平洋には海底活断層があることが分かっている。これが陸上に上がり、出戸西方断層となって六カ所再処理工場直下につながっているという警告をしたのが東海大学の渡辺満久教授。しかし、その見解は日本原燃により全否定されている。そのため現在に至るも六カ所村において巨大内陸地震の対策は十分取れていない。
 この断層が動くときには、太平洋沖で大きな海溝型地震が発生している可能性も高い。その場合、津波は30mを遥かに超えるかもしれないが、再処理工場の建設時にはそんな津波は「想定外」なので、青森県も津波災害を想定していない。もちろん東通原発もだ。
 岩手県の沿岸部は原発が無いので、田老堤防のように10mを超える堤防がいくつも建設されていたが、宮城県沿岸部にはそのような堤防は見当たらない。女川原発が15mの高さにあったから助かったとはいえ、津波の想定波高はあくまでも9m、従ってそれを超える津波に備える堤防は無い。そのため女川町は原発以外は町役場も含めて、ほとんど破壊されてしまった。
 極め付きは福島県沿岸部。福島第一が最大6.1mの想定であり、北は相馬、南はいわきの何処を見ても10mの波高に備えるような規模の堤防は存在していない。

 浜岡・三重では

 このように、原発立地県の沿岸部はいずれも、これまでの津波対策は十分ではないと思われる。東海・東南海・南海地震による津波に襲われる可能性のある地域で、旧浜岡町のある御前崎周辺は、目立った津波対策は無いが、対岸域に相当する三重県では、防波堤以外にも津波避難所がいくつも建てられている地域がある。海岸線がリアス式であるということもー因だが、原発が無いので一定の高さの想定をしても「妨害される」ことが少ないからだろう。
 一方、浜岡原発沖合に位置する海底には、大きな地滑り後が見つかっている。
 今回の東北地方太平洋沖地震に伴う津波が、海底の大きな地盤変状によって、より巨大化したとみられており、その観点からも、重要なポイン卜なのだが、例によって中部電力により「注目されないよう」工作されている。もちろん、海底地滑りを想定すれば、従来の津波波高と遡上高がすぐに倍程度にまでかさ上げされてしまい、「津波を砂丘で止める」予定が、止まらなくなってしまうからだ。もっとも、津波の高さを決めるのは少なくても中部電力では無いが。
 こういう知見に対する「従来の見解を維持したいがためだけの無意味な反論」が、あまりにも大きな被害を生み出してきたのでは無いのか。


 柏崎刈羽では
 
 柏崎刈羽原発付近で発生する可能性のある地震は、これまでの想定では震度6弱止まりだった。解放基盤面で600ガルということは、地上では400ガルにも満たない。
 ところが実際に襲ってきた地震は、地上で700ガル、震度7に達し、解放基盤面に至っては1699ガルと、重力加速度の二倍近<に達する揺れだった。
 幸い、震源断層面が海底だったわりには津波はたいしたことは無かった。しかしこの揺れの大きさでも数メートルに達する津波は起こりえる。もし5メートル以上の津波が来ていたら、柏崎刈羽原発は、炉心損傷を免れるのは難しかっただろう。
 柏崎刈羽原発が想定していた津波の高さはわずか3.1メートルだった。
 日本中の原発が海沿いにある。必然的に津波による影響を受けるが、その想定波高はどこも似たり寄ったり。浜岡を除いて10m以上の想定をしているところは何処にもない。
 一方、10mを超える津波は日本海溝側でも太平洋側でも有史以来頻繁に襲ってきている。とても「異常な天災地変」などではない。平均的津波被害なのだ。
 柏崎刈羽の沖合は、プレート境界が走り、その動きによりひずみが溜まっている。プレート型と活断層による内陸直下型が何時起きても不思議では無い。佐渡島で起きた震度5弱の地震にぞっとした人は多かっただろう。まさに時限爆弾が埋まっている。
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