[2012_02_26_01]巨大津波 警戒促す報告書 電力側注文で修正 文科省 震災8日前に会合 事前報告は非常識(東奥日報2012年2月26日)
 

※以下は上記本文中から重要と思われるヶ所を抜粋し、テキスト化したものである

 東日本大震災の8日前、宮城―福島沖での巨大津波の危険を指摘する報告書を作成中だった政府の地震調査委員会事務局(文部科学省)が、東京電力、東北電力など原発を持つ3社と非公式会合を開催、電力会社が巨大津波や地震への警戒を促す表現を変えるよう求め、事務局が「工夫する」と答えて事実上後退とも取れる修正を受け入れていたことが、25日までの情報公開請求などで分かった。
 報告書の修正案は昨年3月11日の震災の影響で公表されていない。調査委の委員を務める研究者も知らされておらず「信じられない」などの声が出ている。電力会社との「擦り合わせ」とも取られかねず、文科省の姿勢が問われそうだ。
 文科省は「誤解を招かないよう表現を修正した」などと説明。東電は「文科省から情報交換したいとの要請があった。(修正を求めたのは)正確に記載してほしいとの趣旨だった」としている。
 作成中だった報告書は、宮城県などを襲った貞観地震津波(869年)の新知見を反映させた地震の「長期評価」。貞観地震と同規模の地震が繰り返し起きる可能性があると指摘されていた。
 開示された資料や取材によると、会合は「情報交換会」と呼ばれ、昨年3月3日午前10時から正午まで省内の会議室で開催。本県(青森県)、宮城、福島、茨城各県に原発を持つ東電、東北電力、日本原子力発電から計9人が出席した。
 巨大津波への警戒を促す記述について東電などは「貞観地震が繰り返していると誤解されないようにしてほしい」と要求。文科省は「内容は変えないが、誤解を生じにくいよう文章を工夫したい」と応じ、数月後には「繰り返し発生しているかは適切なデータが十分でないため、さらなる調査研究が必要」などとする修正案を作成した。

 客観的な研究成果であるはずの地震の長期評価の作成中に、文部科学省は原発を持つ東京電力などの意見を求め、記述を修正していた。巨大地震の危険性が「高い」とされれば、原発の耐震強化や津波対策など、電力会社は多額の出費を強いられる。評価次第で利害が生じる相手に非公式に事前説明し、記述を変更するのは極めて不適切で非常識だ。
 かつて原子力開発を担った旧科学技術庁は文科省の前身の一つで、同省は現在も原子力行政の一部を所管している。今回の事態は「なれ合い」「癒着」が批判される「原子力ムラ」の内情をうかがわせるものだ。
 地震調査委員会は、研究成果が国民に十分に伝わらず活用されなかったという反省に基づきつくられ、高い客観性が求められるが、今回通常の審議過程とは別に電力会社のみを集めて意見を聞いていたことが判明した。
 地震の長期評価の策定過程はいずれも非公開で、資料や議事録もほとんど公表されていない「ブラックボックス」の中で行われている。
 国や自治体の防災政策をも左右する重要な内容だけに、議事録の速やかな公開など透明性を高める努力は不可欠のはず。しかし情報公開が不十分な上に、今回事前に不透明な「情報交換会」まで行っていたことが発覚した。文科省はこの問題を重く受け止め、検証作業に取り掛かるべきだ。(共同通信・須江真太郎、鎮目宰司)

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