【記事41530】4.14熊本県地震加速度は川内原発規制基準の3倍弱ー(植草一秀氏)(市村悦延2016年4月15日)
 
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4.14熊本県地震加速度は川内原発規制基準の3倍弱ー(植草一秀氏)


4月14日午後9時26分頃、熊本県益城町直下を震源とする大地震が発生した。地震の規模を示すマグニチュードは6.5.震源の深さは約10キロメートルと推定されている。熊本県益城町では震度7の揺れを観測した。15日午前9時現在で震度1以上の余震が120回以上観測されている。震度6強の強い余震も観測されている。午前7時現在で死者9名、負傷者761人が報告されている。負傷者のうち44人が重傷とされている。
亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに、被災された方に心からお見舞いを申し上げる。深度の浅い地震の場合、余震が多数発生するとのことで、今後の余震に十分な注意を払っていただきたいと思う。
今回の地震は断層の横ずれによって発生したものであると報道されている。地震が発生した地点は中央構造線上に位置しており、かねてより大規模地震の発生が警戒されていた箇所である。日本列島は列島全体が地震の巣の上に位置しているともいえ、大規模地震の発生はいかなる場所においても警戒を要する事項である。

関東から九州へ西南日本を縦断する大断層系が中央構造線である。
Wikipediaには、「中央構造線は、糸魚川静岡構造線(糸静線)より東のフォッサマグナ地域では、フォッサマグナの海を埋めた新第三紀の堆積岩に覆われている。第四紀に大きく隆起している関東山地では古第三紀以前の基盤岩が露出し、その北縁の群馬県下仁田町に中央構造線が露出している。関東平野では新第三紀や第四紀の地層に覆われている。九州中部でも新第三紀後期以後の火山岩や阿蘇山をはじめとする現在の火山におおわれている。近畿南部から四国にかけては、中央構造線に沿って約360kmにわたり活動度の高い活断層(中央構造線断層帯)が見られ、要注意断層のひとつとされている。」と記述されている。

中央構造線の一部は活断層となっており、地震等の発生などを警戒しなければならない。今回の地震も活断層が動いたことによって発生したものと考えられ、活断層の活動には最大の警戒が求められる。

同じくWikipediaの記述になるが、「九州では、大分県の佐賀関半島に三波川変成岩がよく露出し、そのすぐ北を中央構造線が通っている。しかし九州中部は火山岩や現在の活火山に厚く覆われ、中央構造線の位置ははっきりしない。臼杵から八代海に抜けているという考えが一般的だが、大分から熊本へ続いているという説もある。現在の九州中部は南北に伸びており、引っ張りによる断層が発達し(別府島原地溝帯、布田川断層帯、日奈久断層帯)、阿蘇山や九重連山のマグマの通り道をつくっていると考えられる。」と表記されている。

九州の中部は中央構造線が露出していないため、構造線がどこを走っているかを確認できないが、大分県から鹿児島県西海岸にまで伸びていると推定されている。
また、Wikipediaにあるように、「引っ張りによる断層が発達し(別府島原地溝帯、布田川断層帯、日奈久断層帯)、阿蘇山や九重連山のマグマの通り道をつくっていると考えられる」御嶽山が噴火したのは2014年9月のこと。2015年には、九州地方で、口永良部島、阿蘇山、桜島の噴火が観測されている。これらの火山活動の活発化が連動している可能性もある。
1596年に発生した慶長伊予地震では、9月1日に、愛媛の中央構造線・川上断層セグメント内M7.0規模の地震が発生した。3日後の9月4日に、豊予海峡を挟んで対岸の大分でM7.0−7.8の慶長豊後地震(別府湾地震)が発生した。この豊後地震の震源とされる別府湾−日出生断層帯は、中央構造線と連続あるいは交差している可能性があるとされている。さらにその翌日の9月5日、これらの地震に誘発されたと考えられるM7.0−7.1の慶長伏見地震が京都で発生した。
こうした連鎖、連動関係に十分な警戒が求められる。

より重大な問題は、愛媛県の伊方原発、鹿児島県の川内原発が、この中央構造線の真上、ないし、極めて近い位置に立地している疑いがあることだ。
今回のような地震が発生する場合、発生地点真上の地点では甚大な被害が発生する。地震の巣の上に原発を立地することほど馬鹿げたことはない。日本列島の火山活動・地震活動が活発期に入ったとの指摘がある。
このなかでの原発稼働は正気の判断ではない。
今回の地震による揺れの強さは、1580ガルであったことが公表されている。
防災科学技術研究所http://goo.gl/sIGaMA
この地震の揺れこそ、原発を破壊する原因になる。

現在、日本で唯一運転されている原発は鹿児島県川内市にある、九州電力川内原子力発電所である。安倍政権はこの原発の再稼働を認めた。原発を再稼働させる理屈はこれだ。
「世界でもっとも厳しい規制基準を定めて、その規制基準をクリアした原発を再稼働させる。」
この言い回しで、国民は騙されている。
「世界でもっとも厳しい規制基準」を「原発の安全を確保する規制基準」と勘違いしてしまうのである。
しかし、「世界でもっとも厳しい規制基準」と「原発の安全を確保する規制基準」はまったく違う。
九州電力川内原発の耐震性能基準は福島事故発生前は372ガルだった。それが、福島事故を受けて620ガルに引き上げられた。これでも「世界でもっとも厳しい規制基準」だ。なぜなら、地震の巣の上に原発を立地するような狂気の判断をする国など存在しないからである。
今回の地震で観測された地震動は1580ガルだ。川内原発の規制基準の約3倍の強さの揺れである。
2008年6月14日に発生した宮城岩手内陸地震では4022ガルの地震動が観測された。また、2007年7月16日に発生した新潟県中越沖地震によって、東京電力柏崎刈羽原子力発電所第3号機では、2058ガルの地震動が観測された。
だから、新しい規制基準では、東京電力柏崎刈羽原子力発電所1〜4号機だけ、耐震性能基準が2300ガルに設定されたのである。実際に2000ガルを超す地震動が観測されてしまったために、規制基準が2300ガルに引き上げられた。従来の基準はわずか480ガルだった。
関西電力大飯原発、高浜原発の運転差し止めを命じた福井地方裁判所の樋口英明裁判長は、2008年に4022ガルの地震動が観測されている。この規模の揺れは、日本のどこでも観測され得る。したがって、少なくとも、この揺れに耐える設計になっていなければ安全を確保したとは言えない。と述べた。当たり前の判断である。
今回の地震による揺れが1580ガルであった事実を軽視することはできない。今回の地震の規模はM6.5である。東日本大震災はM9.0.地震の規模は、東日本大震災に比べて圧倒的に小さい。それにもかかわらず、1580ガルの揺れが観測された。この規模の揺れは、明日にでも川内原発を襲う可能性がある。
活断層は、地震が発生してから判明する場合もある。
川内原発が壊滅して放射性物質が撒き散らされれば、日本列島全体が汚染列島になる。
安倍政権の原発再稼働全面推進の方針を断固糾弾しなければならない。

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