【記事70800】焦点は主要断層の評価 東北電東通原発 新規制基準適合審査申請から4年(デーリー東北2018年6月10日)
 
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焦点は主要断層の評価 東北電東通原発 新規制基準適合審査申請から4年

 東北電力が東通原発(青森県東通村)の新規制基準への適合性審査を原子力規制委員会に申請してから10日で丸4年を迎えた。5月に4度目となる再稼働時期の延期を表明し、安全対策工事の完了までの時間に幅を持たせたばかりだが、超えねばならないハードルは多く、決して余裕がある状況とは言えない。特に主要断層の活動性評価は、耐震設計の目安となる地震の揺れ「基準地震動」の見直しに直結しかねず、東北電が再稼働目標に掲げる「2021年度以降」を実現するための鍵になりそうだ。
 14年6月の審査申請以来、議論が続く敷地内断層の活動性評価。このうち、重要施設直下の小断層では、活断層の判断基準となる12万〜13万年前以降の地層状態を確認できなかった「m―a」を巡り、断層を避けた取水設備新設の表明を余儀なくされるなど、東北電は対応に苦慮。5月の審査会合でようやく活動性を否定する東北電の評価が了承された。
 主要断層で審査の俎上(そじょう)にあるのは9本。東北電は中でも「F―1」が最も深く長いため、その他の8本もF―1の評価で包括的に説明できるとする。
 規制委も、F―1と敷地外南方で接続しているとされる一切山東方(ひときりやまとうほう)断層を念頭に「個別の一本一本を議論するより、(敷地外の断層と)一体的に見た場合にどうかを、主眼において議論した方がいい」との認識を示しており、議論の方向性は共有できている。
 ただ、その活動性に関する意見は対照的。東北電は12万〜13万年前以降の地層で「活動した痕跡がないとするデータがある」と主張する方針だが、地震・津波審査担当の大浅田薫安全規制管理官は「結構、われわれは本当かなという目で見ている」といぶかしむ。
 F―1が活断層と評価されて基準地震動を引き上げるとなると、新たな対策工事が必要となる可能性が高い。m―aと同じように対策を迫られれば、再稼働の前提である21年度内の工事完了目標は遠のく。
 審査議題は他にも残っている。基準地震動と共に審査のヤマ場となる津波の高さ設定をはじめ、1月に大規模噴火時の影響範囲が示された常時観測火山「十和田」の降下火山灰の影響評価、建屋の耐震性など設備に関する議論が見込まれる。対策工事の完了期限までの残り時間は2年10カ月程度。審査が先行する女川原発2号機(宮城県)などの知見の活用で審査期間を短縮できたとしても、再稼働への道のりは明確に見通せない。


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