【記事72490】考えなくてはいけないカルデラ噴火、原発審査に見られる理解の齟齬(そご) 藤井敏嗣さん(前気象庁火山噴火予知連絡会会長)が語る原発審査批判 原子力規制委員会は原発再稼働推進委員会!その178 木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)(たんぽぽ舎2018年7月31日)
 
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考えなくてはいけないカルデラ噴火、原発審査に見られる理解の齟齬(そご) 藤井敏嗣さん(前気象庁火山噴火予知連絡会会長)が語る原発審査批判 原子力規制委員会は原発再稼働推進委員会!その178 木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)

 岩波「科学7月号」の特集「つづく噴火・今後の備え」で原子力規制委員会の火山に関わる審査の問題点が述べられている。
 本シリーズ「その59」「その167」でも述べたが、原子力規制委員会は再稼働審査での火山評価に多々問題がある。
 ここでは、藤井敏嗣さんの原発審査批判を紹介する。

< 藤井敏嗣「噴火からどう学ぶか:予測の現状とすすめ方」から
○考えなくてはいけないカルデラ噴火
 日本国民にはカルデラ噴火の危険性があることを周知するべきだ、同時にカルデラ噴火の研究も早急に開始するべきだ。
 カルデラ噴火の前兆が数年前に捉えられるかどうかは、まったく保証がない。
○いざとなったら諦めてくれは一番イカン
 巨大噴火がほかで規制されていないから原子力規制もやらなくていいというのでいいのか。地震は13万年でやっているのに1万年ぐらいで確実に起こる噴火ではどうしてこうなのか。
○自然災害の場合には統計近似できない
 800度Cの火砕流の中に原子炉が閉じ込められたら何が起こるかは誰も知らない。冷却はしなくなるし、常温のコンクリートで固めるわけではないので、とんでもないことが起こる。
 放射性物質は世界中にばら撒かれるし、火山灰被害から生き延びた人たちも黒い雨にさらされることになりかねない。
○100万炉年に1回程度を超えないも満たせない
 火砕流到達地域に原子炉をつくると、(1万年ぐらいで確実に噴火が起こるので)100万炉年の間に100回ぐらい火砕流がくるので、完全に安全目標を超過してしまう。
○審査で火砕流は到達しないというシミュレーションになっているが?
 大きなカルデラ噴火に伴うような火砕流のシミュレーションは未だ成功していない。そもそもシミュレーションの検証のしようがない。 >

 6月3日に中米グアテマラのフエゴ火山が噴火し、多数の死者・行方不明者がでた。日本では、雲仙火山での火砕流による死亡が記憶される。1902年にカリブ海のプレー火山で発生した火砕流により3万人が亡くなった。 巨大噴火にともなう火砕流は、到達距離が100kmに及ぶ。7300年前の鬼界カルデラや7万年前の阿蘇カルデラの噴火にその例が見られる。
原子力規制委はカルデラ噴火問題を真剣に考えるべきだ。
 なお特集では、巽好幸さん(神戸大学海洋底探査センター)が「巨大噴火と原子力発電所:原子力規制庁の見解を検証する」で原子力規制庁と国民の理解が極めて貧弱であると指摘し、「その167」で述べたように<原子力発電所の火山影響評価ガイドにおける「設計対応不可能な火山事象を伴う火山活動の評価」に関する基本的な考え方>の内容が不合理なものであることを明解に示している。

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