【記事36560】第93回小出裕章ジャーナル(ラジオフォーラム2014年10月18日)
 

第93回小出裕章ジャーナル

参照元音声のみ8分39秒

参照元第93回小出裕章ジャーナルのテープ起こし

 御嶽山噴火から考える火山と原発について「噴火の予知ができないわけですからもともと対策のとりようもないし、規制委が川内原発が安全だというようなお墨付きを出したことその事が私は非科学的だと思います」

石井彰:9月27日に長野県と岐阜県の県境に位置する御嶽山が噴火をして、多くの登山者の方が犠牲になりました。この御嶽山が大きな予兆もなく水蒸気噴火したことで、火山の噴火リスクというのが改めて注目をされていますが、火山と原発について、小出さんにちょっとお話を伺いたいんです。まず、今回の御嶽山の噴火について、小出さんはどんなふうにニュースを見てお感じになられましたでしょうか?
小出さん:まずは、驚いたというのが正直な感想です。御嶽山がまさか爆発するということは、私自身も思っていませんでしたし、多くの人達はあの山が爆発するとは思っていなかったはずだと思います。
 日本の専門家の中でも、火山が爆発するという危険を5段階に分けていたけれども、御嶽山の場合にはレベル1ということで、ほとんど危険がないという風にしか専門家も思っていなかったわけです。それが突然に爆発してしまうということで、やはり自然というのは人知を超えているのだなと改めて思いました。
石井:そういう中で、鹿児島にある川内原発の場合には非常に立地場所からして、「どうしてこんなところに造っちゃったんだろう」というような思いが私にはあるんですが。
小出さん: でもそう言うと、たぶん日本中どこも危ないということになってしまうだろうと思います。ただ、今おっしゃって下さったように、この九州というのは、例えば阿蘇山ありますよね。内輪山と外輪山というのがあるわけですけれども、外輪山の中は全て爆発で吹き飛んでしまった跡なわけですし、桜島があるところ鹿児島湾はこれも火山が爆発して全部吹き飛んだがゆえにあそこが海になっているということであって、巨大なカルデラが5つも並んでいるという所なんですね。
 そういう意味で言えば、九州というのは火山の爆発が一番危険な場所でもあるわけですから、そういう所に原子力発電所を造るということはできれば初めから避けておくべきだったと私は思います。
石井:実際に、火山が爆発した時に、原子力発電所には様々な危険、あるいは事故等々が起きるというふうに考えられると思うんですが、順番を追っていくと先ずどういうことを考えておかないといけませんか?
小出さん:まず、ほんとに巨大な爆発が起きるというようなことになれば火砕流というのが起きて、猛烈に高温な岩石・灰等を含んだ物がその場所から流れ下ってくるということになりますので、そんな事になると原子力発電所のあちこちで多分、様々な障害が出るでしょうし、燃料関係がもし損傷するようなことになれば大量の放射性物質が出てきてしまうということになると思います。それが一番、まずは心配することです。
 次は、今回の御嶽山もそうでしたけれども、火砕流が起きないぐらいな噴火であっても、火山灰が何百キロという所まで飛んでくるということになります。
 原子力発電所というのは、もともと綺麗な空気を循環させなければいけないということで、空調等が大変複雑に絡んでいるわけですが、それが火山灰によってフィルターの目詰まり等々含めて、深刻な障害を起こすだろうと私は思いますし、電気系統もたぶん様々な障害を受けてしまうだろうと思います。
石井:地震列島であり火山大国、日本。この川内原発だけでなく、他にも大変危険な場所にある原子力発電所というのはいくつもありますよね?
小出さん:はい。たくさんあります。火山大国ですので北海道の泊もそうですし、九州という意味では玄海もそうですし、四国の伊方原子力発電所も阿蘇山のすぐ近くですので影響を受けるだろうと思います。
石井:原子力規制委員会の田中俊一委員長は、今回の御嶽山の水蒸気噴火と川内原発で起こる現象が違うと。一緒に議論するのは非科学的だというふうに、自分達の川内原発再稼働についての審査は妥当であるというように記者会見でお答えになってらっしゃいますが、この一緒に議論するのは非科学的だということについて科学者の小出さんはどうお考えですか?
小出さん:私は火山学者ではありませんので、あまり正確にコメントできるかどうか分かりませんが、ただ、御嶽山で起きた水蒸気の噴火と川内原発で今、危惧しているような火砕流が生じるような噴火とは、もちろん規模が違うわけです。
 ですから、一緒に議論するのがある意味妥当でないというのはあるかもしれませんが、でも、一番大切な事は今回の御嶽山の噴火すら全く予知できないままだったということだと私は思いますし、原子力規制委員会も九州電力もなにか噴火の予知ができるかのようなことを言っていて、予知ができれば対策が取れると言ってきたわけですが、噴火の予知ができないわけですから、もともと対策のとりようもないし、原子力規制委員会が川内原発が安全だというようなお墨付きを出したことそのことが私は非科学的だと思います。
石井:つまり、比べることは違ったとしても、根底にある火山の噴火については今の科学技術ではなかなか予知できない。
小出さん: そうです。
石井:有珠山の爆発の場合には、ある程度事前に分かったケースももちろんあったりもしますが。
小出さん: 非常に稀なケースですね。
石井:そうですね。ですから、御嶽山の形で明らかになったのは、火山というのは突然ある種爆発するものなんだというふうな前提に立つことが科学的だという理解でよろしいですか?
小出さん:はい。ほとんど火山学者の方々みなさんがそう言っているのですね。火山の噴火の予知は今の力ではできないというふうに専門家の人達が言ってるわけですから。
石井:分かりました。今後も引き続きいろいろな事が起きている。小出さん、やっぱり日本列島は活動期に入ったという私達は前提に立った方がいいんじゃないか。地震が起きる、火山の爆発が起きるという理解でいいでしょうか?
小出さん:はい。私の知人で石橋克彦さんという東海地震を初めて問題にされたという方がいらっしゃるのですが、その石橋さんが「大地動乱の時代に入った」という風に指摘をしてきていますけれども、ほんとに今、日本というこの国が火山も含めて地震も含めて、大地そのものが大きく動いていくという時代に入っているように私も思います。
石井:そういう中で、冷静に慎重に私達はいろいろな動きを見つめていかなければいけないし、再稼働というようなかたちに踏み込まないようなかたちにしていきたいと微力ではありますが思います。
小出さん:ありがとうございます。ぜひ私もそうしたいです。
石井:今日はどうもありがとうございました。

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