【記事66756】玄海原発差し止め認めず 佐賀地裁決定 火山「具体的危険なし」(東京新聞2018年3月20日)
 
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玄海原発差し止め認めず 佐賀地裁決定 火山「具体的危険なし」

 九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の再稼働を巡る仮処分申し立てで、佐賀地裁は二十日、運転差し止めを認めない決定をした。焦点だった阿蘇山の大規模噴火リスクについて、立川毅裁判長は「重大な被害が生じる具体的な危険は認められず、九電の安全確保策は合理的だ」と判断した。
 3号機は二十三日に再稼働を予定し、4号機は五月に運転再開を計画している。
 仮処分を申し立てたのは山口、福岡、佐賀、長崎、熊本五県の約七十人。
 決定は、火山の影響を評価する際、破局的噴火が発生する相応の根拠が示されない限り、原発の立地が不適切とはならないと指摘。阿蘇カルデラは地下十キロ以内に大規模なマグマだまりがなく「破局的噴火の可能性は極めて低いとした九電や原子力規制委員会の判断は合理的だ」とした。
 東京電力福島第一原発事故後に策定された新規制基準に基づく原発の耐震性や避難計画、火山灰対策も適切で「玄海原発は安全性に欠けない」と結論付け、申し立てを却下した。住民側は即時抗告する方針。
 立川裁判長は昨年六月、別の住民による同様の再稼働差し止めの仮処分申し立てを退けていた。住民側は今回の仮処分と併せて同種訴訟を起こしており、国内外の約一万人が原告となっている。
 火山リスクを巡っては原発から百六十キロ圏内の火山が審査対象となる。昨年十二月の広島高裁決定は、阿蘇カルデラの巨大噴火の可能性を懸念。約百三十キロ離れた四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転を禁じた。玄海原発もほぼ同じ距離にある。
 <玄海原発> 佐賀県玄海町にある九州電力の加圧水型軽水炉。1〜4号機が1975〜97年に順次営業運転を始めた。3号機は2009年、ウランとプルトニウムの混合酸化物(MOX)燃料を使うプルサーマルを国内で初めて導入。3、4号機は17年1月に原発の新規制基準に適合し、同4月までに地元同意の手続きも終えた。九電は老朽化した1号機の廃炉に着手し、2号機の存廃を検討する。

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