【記事31540】実用発電用原子炉及びその附属施設の位置 構造及び設備の基準に関する規則の解釈_別記2_第4条(地震による損傷の防止)(原子力規制委員会2013年6月19日)
 
参照元
実用発電用原子炉及びその附属施設の位置 構造及び設備の基準に関する規則の解釈_別記2_第4条(地震による損傷の防止)

(前略)
(別記2)

第4条(地震による損傷の防止)

 第4条第1項に規定する「地震力に十分に耐える」とは、ある地震力に対して施設全体としておおむね弾性範囲の設計がなされることをいう。この場合、上記の「弾性範囲の設計」とは、施設を弾性体とみなして応力解析を行い、施設各部の応力を許容限界以下に留めることをいう。また、この場合、上記の「許容限界」とは、必ずしも厳密な弾性限界ではなく、局部的に弾性限界を超える場合を容認しつつも施設全体としておおむね弾性範囲に留まり得ることをいう。

 第4条第2項に規定する「地震の発生によって生ずるおそれがある設計基準対象施設の安全機能の喪失に起因する放射線による公衆への影響の程度」とは、地震により発生するおそれがある設計基準対象施設の安全機能の喪失(地震に伴って発生するおそれがある津波及び周辺斜面の崩壊等による安全機能の喪失を含む。)及びそれに続く放射線による公衆への影響を防止する観点から、各施設の安全機能が喪失した場合の影響の相対的な程度(以下「耐震重要度」という。)をいう。設計基準対象施設は、耐震重要度に応じて、以下のクラス(以下「耐震重要度分類」という。)に分類するものとする。

 一 Sクラス
地震により発生するおそれがある事象に対して、原子炉を停止し、炉心を冷却するために必要な機能を持つ施設、自ら放射性物質を内蔵している施設、当該施設に直接関係しておりその機能喪失により放射性物質を外部に拡散する可能性のある施設、これらの施設の機能喪失により事故に至った場合の影響を緩和し、放射線による公衆への影響を軽減するために必要な機能を持つ施設及びこれらの重要な安全機能を支援するために必要となる施設、並びに地震に伴って発生するおそれがある津波による安全機能の喪失を防止するために必要となる施設であって、その影響が大きいものをいい、少なくとも次の施設はSクラスとすること。
・原子炉冷却材圧力バウンダリを構成する機器・配管系
・使用済燃料を貯蔵するための施設
・原子炉の緊急停止のために急激に負の反応度を付加するための施設、及び原子炉の停止状態を維持するための施設
・原子炉停止後、炉心から崩壊熱を除去するための施設
・原子炉冷却材圧力バウンダリ破損事故後、炉心から崩壊熱を除去するための施設
・原子炉冷却材圧力バウンダリ破損事故の際に、圧力障壁となり放射性物質の放散を直接防ぐための施設
・放射性物質の放出を伴うような事故の際に、その外部放散を抑制するための施設であり、上記の「放射性物質の放散を直接防ぐための施設」以外の施設
・津波防護機能を有する設備(以下「津波防護施設」という。)及び浸水防止機能を有する設備(以下「浸水防止設備」という。)
・敷地における津波監視機能を有する施設(以下「津波監視設備」という。)

 二 Bクラス
安全機能を有する施設のうち、機能喪失した場合の影響がSクラス施設と比べ小さい施設をいい、例えば、次の施設が挙げられる。
・原子炉冷却材圧力バウンダリに直接接続されていて、一次冷却材を内蔵しているか又は内蔵し得る施設
・放射性廃棄物を内蔵している施設(ただし、内蔵量が少ない又は貯蔵方式により、その破損により公衆に与える放射線の影響が実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則(昭和53年通商産業省令第77号)第2条第2項第6号に規定する「周辺監視区域」外における年間の線量限度に比べ十分小さいものは除く。)
・放射性廃棄物以外の放射性物質に関連した施設で、その破損により、公衆及び従事者に過大な放射線被ばくを与える可能性のある施設
・使用済燃料を冷却するための施設
・放射性物質の放出を伴うような場合に、その外部放散を抑制するための施設で、Sクラスに属さない施設

 三 Cクラス
Sクラスに属する施設及びBクラスに属する施設以外の一般産業施設又は公共施設と同等の安全性が要求される施設をいう。

 第4条第1項に規定する「地震力に十分に耐えること」を満たすために、耐震重要度分類の各クラスに属する設計基準対象施設の耐震設計に当たっては、以下の方針によること。

 一 Sクラス(津波防護施設、浸水防止設備及び津波監視設備を除く。)
・弾性設計用地震動による地震力又は静的地震力のいずれか大きい方の地震力に対しておおむね弾性状態に留まる範囲で耐えること。
・建物・構築物については、常時作用している荷重及び運転時に作用する荷重と、弾性設計用地震動による地震力又は静的地震力を組み合わせ、その結果発生する応力に対して、建築基準法等の安全上適切と認められる規格及び基準による許容応力度を許容限界とすること。
・機器・配管系については、通常運転時、運転時の異常な過渡変化時及び事故時に生じるそれぞれの荷重と、弾性設計用地震動による地震力又は静的地震力を組み合わせた荷重条件に対して、応答が全体的におおむね弾性状態に留まること。なお、「運転時の異常な過渡変化時及び事故時に生じるそれぞれの荷重」については、地震によって引き起こされるおそれのある事象によって作用する荷重及び地震によって引き起こされるおそれのない事象であっても、いったん事故が発生した場合、長時間継続する事象による荷重は、その事故事象の発生確率、継続時間及び地震動の超過確率の関係を踏まえ、適切な地震力と組み合わせて考慮すること。

 二 Bクラス
・静的地震力に対しておおむね弾性状態に留まる範囲で耐えること。また、共振のおそれのある施設については、その影響についての検討を行うこと。その場合、検討に用いる地震動は、弾性設計用地震動に2分の1を乗じたものとすること。
・建物・構築物については、常時作用している荷重及び運転時に作用する荷重と静的地震力を組み合わせ、その結果発生する応力に対して、建築基準法等の安全上適切と認められる規格及び基準による許容応力度を許容限界とすること。
・機器・配管系については、通常運転時、運転時の異常な過渡変化時の荷重と静的地震力を組み合わせ、その結果発生する応力に対して、応答が全体的におおむね弾性状態に留まること。

 三 Cクラス
・静的地震力に対しておおむね弾性状態に留まる範囲で耐えること。
・建物・構築物については、常時作用している荷重及び運転時に作用する荷重と静的地震力を組み合わせ、その結果発生する応力に対して、建築基準法等の安全上適切と認められる規格及び基準による許容応力度を許容限界とすること。
・機器・配管系については、通常運転時、運転時の異常な過渡変化時の荷重と静的地震力を組み合わせ、その結果発生する応力に対して、応答が全体的におおむね弾性状態に留まること。

第4条第2項に規定する「地震力」の「算定」に当たっては、以下に示す方法によること。
 一 弾性設計用地震動による地震力

・弾性設計用地震動は、基準地震動(第4条第3項の「その供用中に当該耐震重要施設に大きな影響を及ぼすおそれがある地震」による地震動をいう。以下同じ。)との応答スペクトルの比率の値が、目安として0.5を下回らないような値で、工学的判断に基づいて設定すること。

・弾性設計用地震動による地震力は、水平2方向及び鉛直方向について適切に組み合わせたものとして算定すること。なお、建物・構築物と地盤との相互作用、埋込み効果及び周辺地盤の非線形性について、必要に応じて考慮すること。
・地震力の算定に当たっては、地震応答解析手法の適用性及び適用限界等を考慮のうえ、適切な解析法を選定するとともに、十分な調査に基づく適切な解析条件を設定すること。
・地震力の算定過程において建物・構築物の設置位置等で評価される入力地震動については、解放基盤表面からの地震波の伝播特性を適切に考慮するとともに、必要に応じて地盤の非線形応答に関する動的変形特性を考慮すること。また、敷地における観測記録に基づくとともに、最新の科学的・技術的知見を踏まえて、その妥当性が示されていること。

 二 静的地震力

@建物・構築物
・水平地震力は、地震層せん断力係数Ciに、次に示す施設の耐震重要度分類に応じた係数を乗じ、さらに当該層以上の重量を乗じて算定すること。
Sクラス 3.0
Bクラス 1.5
Cクラス 1.0
ここで、地震層せん断力係数Ciは、標準せん断力係数C0を0.2以上とし、建物・構築物の振動特性及び地盤の種類等を考慮して求められる値とすること。
・また、建物・構築物の保有水平耐力が必要保有水平耐力を上回ることの確認が必要であり、必要保有水平耐力の算定においては、地震層せん断力係数Ciに乗じる施設の耐震重要度分類に応じた係数は、耐重要度分類の各クラスともに1.0とし、その際に用いる標準せん断力係数C0は1.0以上とすること。この際、施設の重要度に応じた妥当な安全余裕を有していること。
・Sクラスの施設については、水平地震力と鉛直地震力が同時に不利な方向の組合せで作用するものとすること。鉛直地震力は、震度0.3以上を基準とし、建物・構築物の振動特性及び地盤の種類等を考慮して求めた鉛直震度より算定すること。ただし、鉛直震度は高さ
方向に一定とすること。

A機器・配管系
・耐震重要度分類の各クラスの地震力は、上記@に示す地震層せん断力係数Ciに施設の耐震重要度分類に応じた係数を乗じたものを水平震度とし、当該水平震度及び上記@の鉛直震度をそれぞれ20%増しとした震度より求めること。
・なお、水平地震力と鉛直地震力は同時に不利な方向の組合せで作用させること。ただし、鉛直震度は高さ方向に一定とすること。
なお、上記@及びAにおいて標準せん断力係数C0等を0.2以上としたことについては、発電用原子炉設置者に対し、個別の建物・構築物、機器・配管系の設計において、それぞれの重要度を適切に評価し、それぞれに対し適切な値を用いることにより、耐震性の高い施設の建設等を促すことを目的としている。耐震性向上の観点からどの施設に対してどの程度の割増し係数を用いれば良いかについては、設計又は建設に関わる者が一般産業施設及び公共施設等の耐震基準との関係を考慮して設定すること。

第4条第3項に規定する「基準地震動」は、最新の科学的・技術的知見を踏まえ、敷地及び敷地周辺の地質・地質構造、地盤構造並びに地震活動性等の地震学及び地震工学的見地から想定することが適切なものとし、次の方針により策定すること。

 一 基準地震動は、「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」及び「震源を特定せず策定する地震動」について、解放基盤表面における水平方向及び鉛直方向の地震動としてそれぞれ策定すること。
上記の「解放基盤表面」とは、基準地震動を策定するために、基盤面上の表層及び構造物が無いものとして仮想的に設定する自由表面で
あって、著しい高低差がなく、ほぼ水平で相当な拡がりを持って想定される基盤の表面をいう。ここでいう上記の「基盤」とは、おおむ
ねせん断波速度Vs=700m/s以上の硬質地盤であって、著しい風化を受けていないものとする。
 二 上記の「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」は、内陸地殻内地震、プレート間地震及び海洋プレート内地震について、敷地に大きな影響を与えると予想される地震(以下「検討用地震」という。)を複数選定し、選定した検討用地震ごとに、不確かさを考慮して応答スペクトルに基づく地震動評価及び断層モデルを用いた手法による地震動評価を、解放基盤表面までの地震波の伝播特性を反映して策定すること。
上記の「内陸地殻内地震」とは、陸のプレートの上部地殻地震発生層に生じる地震をいい、海岸のやや沖合で起こるものを含む。
上記の「プレート間地震」とは、相接する二つのプレートの境界面で発生する地震をいう。
上記の「海洋プレート内地震」とは、沈み込む(沈み込んだ)海洋プレート内部で発生する地震をいい、海溝軸付近又はそのやや沖合で発生する「沈み込む海洋プレート内の地震」又は海溝軸付近から陸側で発生する「沈み込んだ海洋プレート内の地震(スラブ内地震)」の2種類に分けられる。
なお、上記の「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」については、次に示す方針により策定すること。

@内陸地殻内地震、プレート間地震及び海洋プレート内地震について、活断層の性質や地震発生状況を精査し、中・小・微小地震の分布、応力場、及び地震発生様式(プレートの形状・運動・相互作用を含む。)に関する既往の研究成果等を総合的に検討し、検討用地震を複数選定すること。

A内陸地殻内地震に関しては、次に示す事項を考慮すること。
i)震源として考慮する活断層の評価に当たっては、調査地域の地形・地質条件に応じ、既存文献の調査、変動地形学的調査、地質調査、地球物理学的調査等の特性を活かし、これらを適切に組み合わせた調査を実施した上で、その結果を総合的に評価し活断層の位置・形状・活動性等を明らかにすること。
ii)震源モデルの形状及び震源特性パラメータ等の評価に当たっては、孤立した短い活断層の扱いに留意するとともに、複数の活断層の連動を考慮すること。

Bプレート間地震及び海洋プレート内地震に関しては、国内のみならず世界で起きた大規模な地震を踏まえ、地震の発生機構及びテクトニクス的背景の類似性を考慮した上で震源領域の設定を行うこと。

C上記@で選定した検討用地震ごとに、下記i)の応答スペクトルに基づく地震動評価及びii)の断層モデルを用いた手法による地震動評価を実施して策定すること。なお、地震動評価に当たっては、敷地における地震観測記録を踏まえて、地震発生様式及び地震波の伝播経路等に応じた諸特性(その地域における特性を含む。)を十分に考慮すること。
i)応答スペクトルに基づく地震動評価
検討用地震ごとに、適切な手法を用いて応答スペクトルを評価のうえ、それらを基に設計用応答スペクトルを設定し、これに対して、地震の規模及び震源距離等に基づき地震動の継続時間及び振幅包絡線の経時的変化等の地震動特性を適切に考慮して地震動評価を行うこと。
ii)断層モデルを用いた手法に基づく地震動評価
検討用地震ごとに、適切な手法を用いて震源特性パラメータを設定し、地震動評価を行うこと。

D上記Cの基準地震動の策定過程に伴う各種の不確かさ(震源断層の長さ、地震発生層の上端深さ・下端深さ、断層傾斜角、アスペリティの位置・大きさ、応力降下量、破壊開始点等の不確かさ、並びにそれらに係る考え方及び解釈の違いによる不確かさ)については、敷地における地震動評価に大きな影響を与えると考えられる支配的なパラメータについて分析した上で、必要に応じて不確かさを組み合わせるなど適切な手法を用いて考慮すること。

E内陸地殻内地震について選定した検討用地震のうち、震源が敷地に極めて近い場合は、地表に変位を伴う断層全体を考慮した上で、震源モデルの形状及び位置の妥当性、敷地及びそこに設置する施設との位置関係、並びに震源特性パラメータの設定の妥当性について詳細に検討するとともに、これらの検討結果を踏まえた評価手法の適用性に留意の上、上記Dの各種の不確かさが地震動評価に与える影響をより詳細に評価し、震源の極近傍での地震動の特徴に係る最新の科学的・技術的知見を踏まえた上で、さらに十分な余裕を考慮して基準地震動を策定すること。

F検討用地震の選定や基準地震動の策定に当たって行う調査や評価は、最新の科学的・技術的知見を踏まえること。また、既往の資料等について、それらの充足度及び精度に対する十分な考慮を行い、参照すること。なお、既往の資料と異なる見解を採用した場合及び既往の評価と異なる結果を得た場合には、その根拠を明示すること。

G施設の構造に免震構造を採用する等、やや長周期の地震応答が卓越する施設等がある場合は、その周波数特性に着目して地震動評価を実施し、必要に応じて他の施設とは別に基準地震動を策定すること。
 三 上記の「震源を特定せず策定する地震動」は、震源と活断層を関連づけることが困難な過去の内陸地殻内の地震について得られた震源近傍における観測記録を収集し、これらを基に、各種の不確かさを考慮して敷地の地盤物性に応じた応答スペクトルを設定して策定すること。なお、上記の「震源を特定せず策定する地震動」については、次に示す方針により策定すること。

@解放基盤表面までの地震波の伝播特性を必要に応じて応答スペクトルの設定に反映するとともに、設定された応答スペクトルに対して、地震動の継続時間及び振幅包絡線の経時的変化等の地震動特性を適切に考慮すること。
A上記の「震源を特定せず策定する地震動」として策定された基準地震動の妥当性については、申請時における最新の科学的・技術的知見を踏まえて個別に確認すること。その際には、地表に明瞭な痕跡を示さない震源断層に起因する震源近傍の地震動について、確率論的な評価等、各種の不確かさを考慮した評価を参考とすること。

 四 基準地震動の策定に当たっての調査については、目的に応じた調査手法を選定するとともに、調査手法の適用条件及び精度等に配慮することによって、調査結果の信頼性と精度を確保すること。
また、上記の「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」及び「震源を特定せず策定する地震動」の地震動評価においては、適用する評価手法に必要となる特性データに留意の上、地震波の伝播特性に係る次に示す事項を考慮すること。

@敷地及び敷地周辺の地下構造(深部・浅部地盤構造)が地震波の伝播特性に与える影響を検討するため、敷地及び敷地周辺における地層の傾斜、断層及び褶曲構造等の地質構造を評価するとともに、地震基盤の位置及び形状、岩相・岩質の不均一性並びに地震波速度構造等の地下構造及び地盤の減衰特性を評価すること。なお、評価の過程において、地下構造が成層かつ均質と認められる場合を除き、三次元的な地下構造により検討すること。

A上記@の評価の実施に当たって必要な敷地及び敷地周辺の調査については、地域特性及び既往文献の調査、既存データの収集・分析、地震観測記録の分析、地質調査、ボーリング調査並びに二次元又は三次元の物理探査等を適切な手順と組合せで実施すること。
なお、上記の「敷地ごとに震源を特定して策定する地震動」及び「震源を特定せず策定する地震動」については、それぞれが対応する超過確率を参照し、それぞれ策定された地震動の応答スペクトルがどの程度の超過確率に相当するかを把握すること。

 第4条第3項に規定する「安全機能が損なわれるおそれがないものでなければならない」ことを満たすために、基準地震動に対する設計基準対象施設の設計に当たっては、以下の方針によること。

 一 耐震重要施設のうち、二以外のもの
・基準地震動による地震力に対して、その安全機能が保持できること。

・建物・構築物については、常時作用している荷重及び運転時に作用する荷重と基準地震動による地震力との組合せに対して、当該建物・構築物が構造物全体としての変形能力(終局耐力時の変形)について十分な余裕を有し、建物・構築物の終局耐力に対し妥当な安全余裕を有していること。
・機器・配管系については、通常運転時、運転時の異常な過渡変化時及び事故時に生じるそれぞれの荷重と基準地震動による地震力を組み合わせた荷重条件に対して、その施設に要求される機能を保持すること。なお、上記により求められる荷重により塑性ひずみが生じる場合であっても、その量が小さなレベルに留まって破断延性限界に十分な余裕を有し、その施設に要求される機能に影響を及ぼさないこと。
また、動的機器等については、基準地震動による応答に対して、その設備に要求される機能を保持すること。具体的には、実証試験等により確認されている機能維持加速度等を許容限界とすること。
なお、上記の「運転時の異常な過渡変化時及び事故時に生じるそれぞれの荷重」については、地震によって引き起こされるおそれのある事象によって作用する荷重及び地震によって引き起こされるおそれのない事象であっても、いったん事故が発生した場合、長時間継続する事象による荷重は、その事故事象の発生確率、継続時間及び地震動の超過確率の関係を踏まえ、適切な地震力と組み合わせて考慮すること。

 二 津波防護施設、浸水防止設備及び津波監視設備並びに浸水防止設備が設置された建物・構築物・基準地震動による地震力に対して、それぞれの施設及び設備に要求される機能(津波防護機能、浸水防止機能及び津波監視機能をいう。)が保持できること。
・津波防護施設及び浸水防止設備が設置された建物・構築物は、常時作用している荷重及び運転時に作用する荷重と基準地震動による地震力の組合せに対して、当該施設及び建物・構築物が構造全体として変形能力(終局耐力時の変形)について十分な余裕を有するとともに、その施設に要求される機能(津波防護機能及び浸水防止機能)を保持すること。
・浸水防止設備及び津波監視設備は、常時作用している荷重及び運転時に作用する荷重等と基準地震動による地震力の組合せに対して、その設備に要求される機能(浸水防止機能及び津波監視機能)を保持すること。
・これらの荷重組合せに関しては、地震と津波が同時に作用する可能性について検討し、必要に応じて基準地震動による地震力と津波による荷重の組合せを考慮すること。
なお、上記の「終局耐力」とは、構造物に対する荷重を漸次増大した際、構造物の変形又は歪みが著しく増加する状態を構造物の終局状態と考え、この状態に至る限界の最大荷重負荷をいう。
また、耐震重要施設が、耐震重要度分類の下位のクラスに属するものの波及的影響によって、その安全機能を損なわないように設計すること。この波及的影響の評価に当たっては、敷地全体を俯瞰した調査調査・検討の内容等を含めて、事象選定及び影響評価の結果の妥当性を示す
とともに、耐震重要施設の設計に用いる地震動又は地震力を適用すること。
なお、上記の「耐震重要施設が、耐震重要度分類の下位のクラスに属するものの波及的影響によって、その安全機能を損なわない」とは、少なくとも次に示す事項について、耐震重要施設の安全機能への影響が無いことを確認すること。
・設置地盤及び地震応答性状の相違等に起因する相対変位又は不等沈下による影響
・耐震重要施設と下位のクラスの施設との接続部における相互影響
・建屋内における下位のクラスの施設の損傷、転倒及び落下等による耐震重要施設への影響
・建屋外における下位のクラスの施設の損傷、転倒及び落下等による耐震重要施設への影響

 第4条第3項に規定する「基準地震動による地震力」の算定に当たっては、以下に示す方法によること。
・基準地震動による地震力は、基準地震動を用いて、水平2方向及び鉛直方向について適切に組み合わせたものとして算定すること。なお、建物・構築物と地盤との相互作用、埋込み効果及び周辺地盤の非線形性について、必要に応じて考慮すること。
・基準地震動による地震力の算定に当たっては、地震応答解析手法の適用性及び適用限界等を考慮の上、適切な解析法を選定するとともに、十分な調査に基づく適切な解析条件を設定すること。
・地震力の算定過程において建物・構築物の設置位置等で評価される入力地震動については、解放基盤表面からの地震波の伝播特性を適切に考慮するとともに、必要に応じて地盤の非線形応答に関する動的変形特性を考慮すること。また、敷地における観測記録に基づくとともに、最新の科学的・技術的知見を踏まえて、その妥当性が示されていること。

 第4条第4項は、耐震重要施設の周辺斜面について、基準地震動による地震力を作用させた安定解析を行い、崩壊のおそれがないことを確認するとともに、崩壊のおそれがある場合には、当該部分の除去及び敷地内土木工作物による斜面の保持等の措置を講じることにより、耐震重要施設に影響を及ぼすことがないようにすることをいう。
また、安定解析に当たっては、次の方針によること。

 一 安定性の評価対象としては、重要な安全機能を有する設備が内包された建屋及び重要な安全機能を有する屋外設備等に影響を与えるおそれのある斜面とすること。

 二 地質・地盤の構造、地盤等級区分、液状化の可能性及び地下水の影響等を考慮して、すべり安全率等により評価すること。

 三 評価に用いる地盤モデル、地盤パラメータ及び地震力の設定等は、基礎地盤の支持性能の評価に準じて行うこと。特に地下水の影響に留意すること。

(後略)

●北海道新聞_たんぽぽ舎メルマガ
▲2017/3/25
■富士山噴火は近い? 300年の沈黙 侮るな 島村英紀・武蔵野学院大特任教授に聞く
★https://www.tanpoposya.com/
 日本人の心のふるさと・富士山。美しい姿は誰にも愛される。だが、もうひとつ、活火山いう顔がある。過去には何度も噴火を繰り返し、大きな被害をもたらした。
 ここ300年は噴火していないが、地震や火山に詳しい島村英紀・武蔵野学院大学特任教授は「いつ噴火してもおかしくない」と警鐘を鳴らす。

◯ 何度も大噴火 予測は不能

 −富士山のどっしりした姿を見ると、噴火などしそうにもなく見えます。
・「しかし、過去には何度も噴火しています。延暦噴火(800〜802年)と貞観噴火(864〜866年)、宝永噴火(1707年)を合わせて富士山の3大噴火と呼びます。
 延暦噴火は比較的規模が小さかったとみられますが、貞観噴火では噴出物が約14億立方メートルと札幌ドーム900杯分に達しました。
 宝永噴火は最も恐ろしいプリニー式という爆発的な大噴火で、誰も予想していなかった南東斜面で起き、噴出物は貞観噴火の半分でしたが、大きな被害を出しました。江戸にも火山灰が降ったと記録されています。万葉集には火を噴く富士山を詠んだ歌がありますし、平安時代には10回の噴火がありました。
 宝永噴火の後、300年も噴火していませんが、、これは富士山の歴史では異例のことなのです。

−どんな噴火がいつ頃起きると考えられますか。
・「それが予測できないのです。もともと富士山は『噴火のデパート』と呼ばれるほど、さまざまなタイプの噴火を繰り返してきました。宝永噴火は爆発的な噴火でしたが、ほかに溶岩流が出るものや噴石や火山灰だけが出るものもあり、噴火の場所も山頂や山腹などさまざまでした。いつ噴火するか、予想するのは現状では困難です。しかし、東日本大震災の後、日本の火山は明らかに活動が高まっています。これまでの100年ほどが異例に静かだったのであって、今は、通常に戻りつつあると考えられます。富士山と近く、地下でつながっている箱根は活発に活動しています。富士山が近々噴火しても不思議ではありません。

◯ 内部は4階構造 崩れやすく

−富士山の内部はどうなっているのですか。
・「内部は4階建ての構造になっています。4階建てと分かったのは21世紀になってからで、数十万年前にマグマが上がってできた最初の富士山は『先小御岳』と名付けられました。その上に10万年前にかぶさってできたのが小御岳。さらにその上に1万年前までにできたのが古富士山。そしてその後の噴火で今の富士山の形ができました。火山灰と溶岩の層がお菓子のバウムクーヘンのように重なり合ってできていて、美しい形をしていますが、とても崩れやすいのです。

◯ 首都圏にも打撃 産業マヒも

−もし富士山が噴火したら、どんな被害が考えられますか。
・「当然、登山客に危険が及びます。富士山は登山客が多く、夏は山頂まで行列ができるほどで、夜も登る人がいます。突然噴火したら、58人が亡くなって戦後の噴火では最大の惨事となった2014年の御嶽山をはるかに上回る死傷者が出るでしょう。
 また、周囲には多くのリゾート施設があり、農業や牧畜も盛んです。豊富な伏流水を使った工場もあります。これらも大きな被害を受けます」

−首都圏にも被害が及ぶでしょうか。
・「火山灰が8000メートル以上まで噴き上がると、成層圏の偏西風に乗って東に飛ばされます。離れているといっても、富士山から首都圏までは120キロ。わずか2時間ほどで火山灰がやってきます。火山灰は『灰』ではなく、先がとがった岩の粉ですから、大量の火山灰が降ると、健康な人でも胸や鼻、のどに不快感を覚えます。目を傷つけ、失明につながる恐れもあります」

−産業への影響も心配されますね。
・「火山灰がわずか1ミリ積もっただけで道路の白線が見えなくなり、自動車の運転に支障が出ます。空港も鉄道も使えなくなり、交通がまひします。湿った火山灰のために回路がショートしたり、重さで電線が切れたりして、電力が使えなくなることもあるでしょう。
 貯水池が汚染されて上水道が使えなくなる恐れもあります。火山灰の微細な粒子がディスクに入り込んでコンピューターが使えなくなると、産業全体がストップすることも覚悟しなければなりません。さらに二次災害の危険もあります。1926年(大正15年)の十勝岳噴火では泥流で多くの死傷者が出ました。富士山でも降り積もった火山灰で同じような災害が起きても不思議ではありません」

−備えることが可能でしょうか
・「噴火したら何が起きるかを普段から考えておくことが重要です。富士山の観測体制は、噴火が起きた場合の被害に比べるとあまりに貧弱なので、強化しなくてはなりません。避難のためのハザードマップも作られていますが、噴火の場所が予想できないので、うまく使えるかどうか。避難路とされる場所で爆発が起きるかもしれません。
 気がかりなのは、300年ぶりの噴火が大噴火だったという例が世界で数多くあることです。
 例えば、カリブ海に浮かぶスーフリエール・ヒルズ火山は1997年の大噴火で多数の死傷者を出し、首都機能を移転させるほどの被害を受けました。富士山が同様の大噴火をする可能性は否定できないのです」


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